2024年2月5日月曜日

黄帝針経の基本としくみ(16)

  脈の留止するところ

 先ず身体を角柱と見立てた場合の頂点群が有って,おおむね「天」字を戴く。任脈の左右に六陽が並び,両腋の下には二陰が行く。頚周りの穴を駆使して,四肢の筋痛を治療している同学がいるが,L21寒熱病篇に大牖五部というセットが有って,足陽明、手陽明、足少陽、足太陽が頚部に,臂太陰が腋に至るとして,同じ穴が列挙される。おもしろいことに病症にはおおむね「暴」字を冠している。急症状に有効かどうか,試してみる価値は有りそうに思う。

 腋内の動脈の天府と腋下三寸の天池をここで取り上げる理由はよくわからないが,後文には六陽の記事の後に,「陰尺動脈在五里,五輸之禁」というのが,天府と天池に関わる説明だとすると,九針十二原篇の「奪陰者死」に対する小針解は「尺の五里を取り,五往するものをいうなり」と解し,L60玉版篇では「五里は五蔵の精気血液の注ぐ処であるから,もし迎えて奪う,つまり瀉法を施すこと五度に及ぶと五蔵の気が尽きてしまうから,針刺は慎むべきだ」という。

 ここの「陰尺動脈」の本意は,体表を行く陽経脈と対比して,陰経脈のことをいうだけのことかも知れない。「陰之動脈」のあやまりではないか,とも思う。また「里」は裏,つまり,陰の動脈は裏(内部=五蔵)と直接関わるので,慎重なうえにも慎重に取り扱うべきである,というのかも知れない。

 五里は五里穴のことではないと思う。

2024年2月3日土曜日

としのうちに

 年のうちに 春は来にけり ひととせを

 去年とやいはむ 今年とやいはむ

黄帝針経の基本としくみ(15)

 

 五蔵六府の本輸の説明に最も普遍的に用いられている文字は,「陥」であろう。「動」の字が用いられているのは手太陰の経渠と尺沢,足少陰の復留のみ。案外と少ない。

 「陥」字が用いられている例:太淵;曲沢;太衝・中封;太都・商丘・陰之陵泉;太谿;臨泣・丘虚;内庭・陥谷・解谿;陽池・支溝・天井;前谷・陽谷・小海;陽溪。