仁和寺本『太素』02調食:其大氣之{⿰木専}而不行者,積於胸中,命曰氣海。
楊上善注:{⿰木専},謗各反,聚也。
校勘:『靈樞』56五味(明刊無名氏本){⿰木専}作搏,(明刊趙府居敬堂本){⿰木専}作摶。
※いずれにせよ木偏は手偏に改める。聲符専は專の俗,右肩の丶は無い。したがって{⿰木専}は字形のうえからは摶と解される。
しかし,摶の字音は『漢辞海』で タン・セン。反切の謗各反はハクで異なる。ハクなら搏だろう。
搏の字義は『漢辞海』で うつ・とる。聚也 とは些か距離が有りはしないか。摶ならば あつまる の字義が有り,『新字源』に類字として聚をあげており,問題ない。
一般には音義の齟齬が有るとされ,すすんで楊上善が釋音を誤ったというものも有るが,大学者が搏・摶の字音を知らないなどということが有り得るだろうか。右肩の一點を缺くことなどは俗字の常であり,搏の例は教育部異體字字典にも取り上げられている。あるいは うつ・とる→拾い取る→あつめる→あつまる も案外と似通った概念かも知れない。
仁和寺本『太素』03調陰陽:聖人{⿰手専}精神,或服天気,通神明。
楊上善注:{⿰手専},附也;或,有也。
校勘:『素問』03生氣通天論{⿰手専}作摶。『故訓滙纂』に,『慧琳音義』に引かれた『考聲』として,「皆搏」の注「搏,附著也」,「摶霄」の注「摶,附也」を載せる。結局,搏と摶と,いずれが是かはっきりしない。ただ,經文の文字の傍らに「謗各反」と注記されているから,少なくとも鈔者は搏と理解していた。
仁和寺本『太素』05陰陽合:{⿰手専}而勿沈……,{⿰手専}而勿傅……。
楊上善注:{⿰手専},相得也。※『小字源』の搏に,つかむ・つかみとる。
『素問』06搏而勿浮……,搏而勿沈……。
王注:搏擊於手。
※『素問』經・注の字形と字義は搏であっている。『太素』楊注は若干微妙だが,まあ搏でいいだろう。
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