六府の要穴
膏の原 肓の原
五蔵の原は左右に二つずつで併せて十,残りの二つは膏の原と肓の原である。膏の原と肓の原の実際は何か。四時気篇には,邪が大腸に在れば「肓の原,巨虚上廉,三里を刺す」とあり,邪が小腸に在れば「これを肓の原に取る」とあり,「巨虚下廉を取って,以ってこれを去る」とある。しかし,大腸でも小腸でも肓の原というのはおかしい。実は『太素』では,大腸の方は「賁の原」を刺すことになっている。そして楊注に「賁は,膈なり」とする。またそもそも,九針十二原篇の「膏之原」も,『太素』諸原所生では「鬲之原」になっている。九針十二原篇も四時気篇も,校勘に拠って修正すれば,膏と肓あるいは鬲と肓の対になる。大腸に膏の原・巨虚上廉・三里と,小腸に肓の原・巨虚下廉。つまり,膏の原は大腸,肓の原は小腸を担当している。
脹満と飱泄
「脹満は三陽を取り,飱泄は三陰を取る」というのも,上下文の意と関わりが無いから錯簡だろうとされることが多いようだが,おそらくは誤解である。『針経』の諸篇にはしばしば脹満と飱泄を対挙している。府の二大症状として認識されているらしい。そこでそのそれぞれに対処するための原穴として,九針十二原篇では膏の原と肓の原を挙げ,「脹満は三陽(膏の原?)を取り,飱泄は三陰(肓の原?)を取る」と締めくくる。つまり,膏の原は脹満,肓の原は飱泄に対処している。ただし,三陽と三陰は,何か別字の誤りである可能性が高い。四時気篇にいう「飱泄は三陰の上を補い,陰陵泉を補う」と何らかの関連が有るとは思う。
下陵 陰陵泉 陽陵泉
陰に陽疾があれば下陵三里を取り,疾高くして内なるものには陰陵泉を,疾高くして外なるものには陽陵泉を配する。陰に陽疾がある云々は,陰である腹中に陽邪(あるいは熱象)がある場合にはすべからく三里を取るべしというのだろう。その上で陰・陽の陵泉を配する。四時気篇の「飱泄には,三陰の上を補い,陰の陵泉を補う」という記載を基として,『明堂』などの主治を考察すると,飱泄に陰陵泉というのはかなり普遍的な考え方らしい。そこで,脹満には陽陵泉という使い分けが成立するのかも知れない。気を下すべき状況で,脹満を外なるもの,飱泄を内なるものの代表とする。
脹満:鳩尾・上巨虚・三里・陽陵泉
飱泄:脖胦・下巨虚・三里・陰陵泉
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